遺言の執行
みなさま、こんにちは。
兵庫県神戸市でお客さまの問題の早期解決と行政書士の立場からできる社会貢献を目指し活動しているウェーブ行政書士事務所の松井昭一です。
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神戸の終活奮闘記では、みなさまが遺言を作成するときや突然相続が始まったときに役立つような記事を書いていきたいと考えています。
どうぞ、肩の力を抜いて気軽にお付き合いくださいませ。
前回の記事では、遺言を執行するために必要な準備手続きについて説明いたしました。
今回は、遺言の執行について説明いたします。
遺言の執行
遺言の執行?
遺言の執行とは、遺言の効力が発生した後、その内容を実現する手続きのことです。
遺言の内容が不特定物の場合、目的物を特定したうえで、これを受遺者に引き渡さなければなりません。
不特定物とは、具体的な取引にあたって、当事者が単に種類、数量、品質等に着目し、その個性を問わずに取引した物のことです。
例えば・・・
「今日のお昼は、○○店でラーメンを食べよう」
この場合における「ラーメン」は、食べ物の種類のであるラーメンを食べることを目的としていますが、個性に着目していないため不特定物となります。
一方・・・
「今日のお昼は、○○店でみそラーメンを食べよう」
この場合における「みそラーメン」は、食べ物の種類であるラーメンを食べることを目的とし、さらにみそラーメンという個性にまで着目しているため特定物となります。
復習となりますが、受遺者とは、遺贈により被相続人の遺産を取得した者のことで、遺言により遺贈を受けた相続人も受遺者となります。
目的物の特定とは、上記の昼食にラーメンを食べる事例を用いて説明すれば、お店に入った客がラーメンを注文した時点といった、不特定物の個性に着目し取引等が確定された状態のことです。
遺言の内容が不特定物の場合、目的物を特定したうえでこれを受遺者に引き渡さなければならないとは、遺言者が所有していた不動産(不特定物)のうち○○㎡といった具合に目的物を確定させ、これを受遺者に引き渡す必要があるということです。
また、遺言によって推定相続人の廃除が行われる場合には、家庭裁判所に推定相続人の廃除の審判を請求しなければなりません。
遺言執行者
遺言によって子の認知や相続人の廃除、遺言の執行により相続人の利益に反するなど遺言の内容によっては、相続人自身が遺言を執行すれば公正を期すことが難しく第三者に遺言を執行させたほうが良い場合に、遺言執行のため特別に選任された者を遺言執行者といいます。
遺言執行者は、遺言によって1人または数人を指定することができ、遺言執行者の指定を第三者に委託することができます。
この遺言執行者の指定を受けた者は、遺言執行者になることを承諾した場合、直ちに遺言執行者の任務を行う義務を負います。
相続人やその他の利害関係人は、遺言執行者の指定を受けた者に対し相当の期間を定めて遺言執行者となることを承諾するのか否かについて催告することができます。
相当の期間を定めて催告した後、その期間内に遺言執行者となることについて確答がない場合、遺言執行者に指定された者が遺言執行者となることを承諾したとみなされます。
遺言執行者となった者は、まず、管理すべき対象となる財産の状況を明確にするため、遅滞なく相続財産の目録を作成してすべての相続人に交付しなければなりません。
遺言執行者は、相続人の代理人とみなされ、相続財産の管理や遺言を執行するために必要ないっさいの行為をする権利や義務があります。
遺言執行者の権利義務について争われた裁判では、
「特定の不動産を特定の相続人(甲)に相続させる趣旨の遺言がなされた場合において、他の相続人が相続開始後に当該不動産につき被相続人から自己への所有権移転登記を経由しているときは、遺言執行者は、この所有権抹消登録手続きのほか、甲への真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続きを求めることができる。」
として、遺言執行者を相続人とみなし、相続財産の管理や遺言執行に必要な後遺について権利義務を認めています。
遺言執行者が存在する場合、相続人は、相続財産を売却するなどの処分行為や遺言の執行をさまたげる行為をすることができなくなります。
相続人が、遺言執行者が存在する場合において、その遺言執行者が行うはずの遺言の執行をさまたげた行為についてどのような効力が生じるか、また、遺言執行者として指定された者が、遺言執行者に就任することを承認する前の時点で遺言執行者がある場合に該当するか争われた裁判において、
「民法1013条が、遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができないと規定しているのは、遺言者の意思を尊重すべきものとし、遺言執行者をして遺言の公正な実現を図らせる目的に出たものであり、上記のような法の趣旨からすると、相続人が、同条(1013条)の規定に違反して、遺贈の目的不動産を第三者に譲渡し又はこれに第三者のため抵当権を設定してその登記をしたとしても、相続人のこの処分行為(相続人による抵当権設定および登記)は無効であり、受遺者は、遺贈による目的不動産の所有権取得を登記なくして上記処分行為の相手方たる第三者に対抗することができるものと解するのが相当である…。
そして、前示のように法の趣旨に照らすと、同条(1013条)にいう「遺言執行者がある場合」とは、遺言執行者として指定された者が就職を承諾する前をも含むものと解するのが相当であるから、相続人による処分行為が遺言執行者として指定された者の就職の承諾前にされた場合であっても、右行為は生ずるに由ないというべきである。」として、
遺言執行者がいる場合に相続人が無断で行なった処分行為の効力については無効とし、遺言者として指定された者が就職を承認する前の時点で「遺言執行者がある場合」については、遺言執行者に指定された者が就職を承諾する前も含まれるとしています。
遺言執行者は、やむを得ない事由がない限り、原則として他の第三者に遺言執行者の任務を行わせることはできません。
遺言者が、遺言執行者を復任することを認める意思を表示していたときは、例外的に第三者に遺言執行者の任務をさせることができます。
遺言執行者の復任の例外として、第三者に遺言執行者の任務を行わせる場合、遺言執行者は相続人に対して復任する者の選任及び監督について、本人に対してその責任を負います。
遺言執行者が数人いる場合、遺言執行者の任務の執行は、遺言者の特段の意思がない限り、過半数により決定されます。
相続の目的財産の価値を現状のまま維持する家屋の修繕などの保存行為については、各遺言執行者が単独ですることができます。
遺言の執行にかかる費用は、相続財産から負担されますが、費用を負担することで遺留分を減少させることまでは認められていません。
遺言執行者は、遺言で定められた報酬、または家庭裁判所が相続財産の状況などを判断して定めた報酬を受けることができます。
遺言執行者がおこなうべき任務を怠った場合や正当な理由がある場合には、相続人などの利害関係人は遺言執行者の解任を家庭裁判所に請求することができます。
また、遺言執行者は正当な理由があるときには、家庭裁判所の許可を得て遺言執行者を辞任することができます。
遺言により子の認知がなされるなど、遺言執行者が必要であるのに遺言による遺言執行者の指定がない場合や遺言執行者の指定をされた者が遺言執行者に就職することを承諾しなかった場合または遺言執行者の解任・辞任があった場合、相続人などの利害関係人の請求により、家庭裁判所が代わりに遺言執行者を選任することができます。
遺言執行者の欠格事由
未成年者は、事理弁識能力が未成熟であることを理由として遺言執行者の欠格事由に該当するため遺言執行者になることができません。
破産者は、財産管理能力が乏しいとされるため遺言執行者の欠格事由に該当するとして遺言執行者になることができません。
財産行為を行う際、未成年者と同じように一定の事項について保護される制限行為能力者のうち、成年被後見人や被保佐人については、平成11年の民法改正により遺言執行者となることができるようになりました。
おわりに
今回は、遺言の執行について説明いたしました。
神戸の終活奮闘記では、みなさまが遺言を作成するときや突然相続が始まったときに役立つような記事を書いていきたいと考えています。
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