遺言の効力③ 遺贈以外の効力

 

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前回の記事では、遺言の効力「遺贈」について確認いたしました。

遺言の効力「遺贈」についての記事はこちら

今回は、遺贈以外の遺言の効力について説明いたします。

負担付遺贈

負担付遺贈とは

遺言者である父が、「自分の所有する土地と建物を長男に与えるかわりに、長男は母親と一緒に暮らして面倒を見なければならない」とか「次男に現金1億円を与える代わりに私の事業を引き継いでもらう」などのように、一定の負担を付して遺贈をおこなうことです。

 

負担付遺贈の受遺者には、第三者や相続人を問わず指名することができます。

 

負担付遺贈の受遺者は、遺贈された財産を取得するとともに、負担を履行すべき義務を負います。

 

負担を履行すべき義務の範囲

負担付遺贈は、遺贈と同じように遺言者からの一方的な意思表示によって行われるものという性質を持っていることから、受遺者に過度の不利益を与えててしまうことがあります。

 

そのような過度な不利益から受遺者を保護するため、遺贈の目的財産の価額を超えた負担を課されても、目的財産の価額を超えない限度で履行すればよいとされています。

 

負担付遺贈の目的の価額が相続の限定承認または遺留分回復の訴えにより減少したときは、遺言者が特段に意思を表示していないかぎり、受遺者は、その減少の割合に応じて負担した義務を免れることができます。

 

負担付遺贈の放棄

負担付遺贈の受遺者は、遺贈を放棄することができます。

 

負担付遺贈の受遺者が遺贈を放棄する場合、遺言者が別段の意思を表示していないかぎり、負担の履行によって利益を受けるはずであった者(上記例の母親)は、みずから受遺者となることができます。

 

負担付遺贈の取消し

負担付遺贈の受遺者が負担を履行しないときには、相続人は相当の期間を定めて履行を催告することができます。

 

相当の期間内に受遺者が履行しないとき、相続人は遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができます。

遺贈の撤回の事由

最終の意思を尊重するため、遺言者は遺贈をいつでも自由に撤回することができます。

 

遺贈の承認・放棄

包括遺贈の受遺者は相続人に準じた地位となるので、遺贈を放棄したいときは、自己のために遺贈があったことを知った日から3ヶ月以内に遺贈を放棄しなければなりません。

特定遺贈の受遺者は遺言者の死亡後いつでも自由に遺贈を放棄することができます。

いくら特定遺贈が利益を受けるものとはいえ受遺者の意思に反してまで強制されるものではないためです。

 

遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時に遡って効力を生じることとなります。

 

遺贈義務者その他の利害関係人は、相当の期間を定めてその期間内に遺贈の承認または放棄をすべき旨を受遺者に催告することができ、この期間内に受遺者が遺贈義務者に対して遺贈について承認・放棄の意思表示をしないときは、遺贈を承認したものとみなされます。

 

遺贈義務者とは、遺贈の履行義務を負う者のことで、原則として遺贈義務者となるのは相続人です。

 

みなすとは、性質の異なる事柄を、他のある法律関係と同様に取り扱うこととするときに用いる法令適用上の擬制のことです。

 

遺贈は、通常、受遺者が利益を受けるものという性質から、受遺者の意思がはっきりしないのであれば、遺言者の最終意思を尊重しようという趣旨により、承認が擬制されます。

 

遺言者の死亡により遺贈が生じたが、受遺者が証人・放棄をしないうちに死亡してしまった場合、受遺者の相続人は自己の相続権の範囲内で承認または放棄をすることができます。

 

これは、遺言者死亡により生じた特定受遺者たる地位は、受遺者の死亡によりその相続人に承継されるため、受遺者に認められていた承認・放棄の権利が相続人に承継されるということです。

 

ただし、遺言者が特定の者に対してのみ遺贈するなど、特別な意思を表示した場合、その遺言者の意思に従うこととなります。

 

受遺者が遺贈に対し、いったん承認・放棄を行った後は、原則としてその承認・放棄を撤回することはできません。

 

いったんなされた遺言の承認・放棄の撤回が例外的に認められるのは、制限行為能力、詐欺・強迫により行われた承認・放棄を取り消す場合に限られ、追認できる時から6ヶ月間追認されなかったときは、時効により取消権が消滅します。

 

この取消権は、相続の承認・放棄の時から10年間行使されなかったときも取消権は消滅します。

 

民法上の取消権の時効を主張できる期間は5年から20年とされていることが多いのですが、遺贈について上記のように短い行使期間が設けられている理由は、遺贈の承認・放棄は相続債権者などの利害関係人に与える影響が大きいため、その効力の早く確定すべきだからとされています。

 

遺言の無効・失効、遺産に属しない場合の効力

遺贈の無効・失効の場合の財産の帰属

遺贈が、「その効力を生じないとき」または「放棄によってその効力を失ったとき」受遺者が受けるべきであったものは、遺言者が特段の意思を表示していないかぎり、相続人に帰属します。

遺産に属さない権利の遺贈

遺贈は、その目的である権利が、遺言者の死亡の時点において相続財産に属していなかった場合、効力が生じません。

 

ただし、その権利が相続財産に属するかどうかにかかわらず、遺言者がその目的である権利を遺贈の目的にしていることが遺言書の記載から明らかに認められる場合には、効力が生じます。

 

仮に実際には相続財産に属さないにもかかわらず遺贈の効力が生じた場合、遺贈義務者はその権利を取得して受遺者にその権利を移転しなければなりません。

 

このとき遺贈義務者が、遺贈の目的とされる権利を取得することができなかったり、取得するため過分の費用が必要となったときは、遺言者がその遺言において特段の意思を表示していた場合でなければ、遺贈の目的の価額を弁償しなければなりません。

おわりに

今回は、遺贈以外の遺言の効力について説明いたしました。

 

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