遺言でできること

みなさま、こんにちは。
兵庫県神戸市でお客さまの問題の早期解決と行政書士の立場からできる社会貢献を目指し活動しているウェーブ行政書士事務所の松井昭一です。

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神戸の終活奮闘記では、みなさまが遺言を作成するときや突然相続が始まったときに役立つような記事を書いていきたいと考えています。

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前回までは、普通方式遺言と特別方式遺言のそれぞれの特徴について確認いたしました。


今回は、遺言で何ができるのかについて説明いたします。

遺言でできること

 

普通方式遺言と特別方式遺言の関係において、普通方式遺言が一般的におこなわれる遺言とされています。

 

遺言・相続奮闘記において特に明記がない「遺言」という記載は、普通方式遺言を指しています。

 

遺言者は、遺言で次のことをおこなうことができます。

 

  • 遺贈
  • 遺言の撤回
  • 認知
  • 後見人や後見監督人の指定
  • 推定相続人廃除の請求
  • 廃除の取消し
  • 遺言執行者の指定または委託
  • 遺産分割の禁止

 

遺言でおこなうことができる各項目について確認していきます。

 

遺贈

遺贈とは、自分の財産を特定の人に無償で与えることです。

 

民法に規定されている遺贈によく似たものに「贈与」があります。

 

贈与とは、自分の財産を特定の人に与える意思表示をし、相手方がこれを承諾することにより成立する契約の一種です。

 

遺贈は、特定の財産を与えられる者の意思を問わず、特定の財産を与えようとする者からの一方的な意思表示で完結することから、「単独行為」といわれます。

 

この特定の財産を与えられる者のことを「受遺者」といい、人に限らず会社や社団などの法人も受遺者となることができます。

 

遺言作成後、受遺者が遺言者の死亡以前に死亡したときは、遺贈の効果は生じないとされています。

 

遺贈には、包括遺贈と特定遺贈があります。

包括遺贈

包括遺贈とは、遺言者が「遺産の全部」とか「遺産の何分の1」というように遺産の割合を示して遺贈することです。

 

包括という言葉が用いられていますが、「財産の全てを遺贈するもの」ではないので勘違いしないよう注意が必要です。

 

包括遺贈は、実質的に通常の相続と変わらないので包括遺贈を受ける「包括遺贈者」は相続人と同じ権利を主張することができ、相続人と同じ義務が課されます。

 

そのため、包括遺贈者は他の相続人とともに遺産分割協議に参加することができる一方で、被相続人の債務を遺贈の割合に応じて承継しなければなりません。

 

包括遺贈者には、相続人と同じように遺贈を承認するか放棄するかの自由が認められています。

 

包括受遺者が遺贈を放棄しようと思ったら、相続人と同じように自分のために包括遺贈があったことを知った時から3ヵ月以内に、家庭裁判所に放棄の申し出をしなければなりません。

特定遺贈

特定遺贈とは、遺言者が「ある建物1棟」とか「某銀行の預金全部」というように、特定の財産を示して遺贈することです。

 

包括遺贈の場合と異なり特定遺贈の受遺者は相続人の権利のみを取得し、原則として(原則・例外という言葉は、これからも法律に関連する話では頻繁に出てきます。)、相続人の義務が課されません。

 

特定遺贈の受遺者における例外として相続人の義務が課されるのは、負担付遺贈の場合のみです。

 

負担付遺贈とは、遺言者が遺贈をおこなう際、受遺者に一定の負担を付すことです。

 

例えば、遺言者の長男に合計1,000万円の土地・建物を与えるが、母(遺言者の妻)が死亡するまで面倒をみる(扶養する)といった負担(義務)を課すような場合がこれに当たります。

 

この場合、受遺者である長男は、遺贈の目的の価額を超えない限度で義務を履行する責任を負うこととなり、この義務の不履行があった時、他の相続人は一定の手続きを経て家庭裁判所にその遺贈の取消しを請求することができます。

 

遺贈の目的の価額を超えない限度とは、上記例の母の面倒をみるために2,000万円必要となる場合であっても1,000万円を超える部分について負担しなくてもいいということです(あくまで法学上・講学上の理論であるため、「人道的におかしいのでは?」という疑問は置いておいてください)。

 

特定遺贈の場合には、受遺者は遺言者の死亡後いつでも遺贈を放棄することができ、包括遺贈の場合のような期限の制限はなく、家庭裁判所への申し出も必要ありません。

 

ただし、特定遺贈を受けた者は、いったん遺贈の承認または放棄をした以上、この意思を撤回することはできません。

遺言の撤回

遺言は、その方法を問わず遺言者の最終意思が尊重されなければなりません。

 

そのため遺言を作成した後に遺言者の気が変わったときは、遺言を自由に撤回することができます。

 

この撤回とは、講学上「遺言の効力を将来に向かって失わせる」ことをいいます。

 

遺言の撤回は、次のような場合に認められます。

  • 前の遺言を撤回する遺言をしたとき
  • 前の遺言の内容が後の遺言の内容と抵触するとき
  • 前の遺言内容と遺言後の生前の処分その他の法律行為が抵触するとき
  • 遺言者が故意に遺言書または遺贈目的物を破棄したとき

 

前の遺言を撤回する遺言をしたとき

この場合、遺言の形式は特に問いません。そのため、公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回することもできます。

 

前の遺言の内容が後の遺言の内容と抵触するとき

前の遺言の内容が後の遺言の内容と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます。

 

例えば、長男に土地を遺贈し、次男に建物を遺贈し、三男に預貯金全額を遺贈していたが、後の遺言で次男に土地と建物を遺贈し、三男に預貯金全額を遺贈した場合…

 

土地を遺贈する部分について抵触するため、長男に土地を遺贈することが後の遺言で撤回されたものとみなされ、次男に土地と建物が遺贈されることとなります。

 

預貯金については前後の遺言で抵触していないため、そのまま三男へ遺贈されます。

 

前の遺言内容と遺言後の生前の処分その他の法律行為が抵触するとき

前の遺言内容と遺言後の生前の処分その他の法律行為が抵触するときは、その抵触する部分について前の遺言を撤回したものとみなされます。

 

例えば、長男に遺贈した土地を遺言者が売却してしまった場合などです。

 

遺言者が故意に遺言書または遺贈目的物を破棄したとき

遺言者が故意に遺言書または遺贈目的物を破棄したときは、その廃棄した部分について遺言を撤回したものとみなされます。

認知

認知は、届出がない限り当事者間に法律上の親子関係が成立しないものですが、遺言による認知は遺言の発効と同時に効力が生じるもので、遺言執行者が行う戸籍法上の届出は報告的届出といわれます。

後見人や後見監督人の指定

後見人とは、判断能力が不十分と考えられるものを補佐する者のことです。

 

後見監督人とは、後見人自体を監督する役目を担う者のことです。

 

遺言で、親権者が亡くなり未成年者に親権を行使できる者がいなくなってしまったときに親権者に代わって未成年の財産管理や監護・教育を適切におこなう者を指定しておくことができます。

推定相続人廃除の請求

推定相続人の廃除とは、相続欠格のように相続人資格を当然に否定するほどの重大な事由はないのですが、被相続人から見てその者に相続をさせたくないと考えられるような非行があり、かつ、被相続人がそのものに相続をさせたくないと考える場合に、被相続人の請求により家庭裁判所がその推定相続人の相続権をはく奪する制度です。

 

廃除原因とされる被相続人から見てその者に相続をさせたくないと考えられるような非行には、被相続人に対する虐待または重大な侮辱と、その他の著しい飛行が該当します。

 

例えば、父親をいつも「馬鹿おやじ」と呼び、ときには襟首をとらえて引き回したり、病気中も介抱しない息子の行為があったなど、父母に対する暴行・浪費壁・遊興・財産の無断売却といったものを複数行っている場合に著しい飛行を認定する裁判例が多いようです。

 

この推定相続人の廃除を遺言でおこなうことができます。

廃除の取消し

被相続人は、生前の請求または遺言により、いつでも相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができます。

 

この廃除の取消しをおこなうことができる者は、被相続人および被相続人の遺言に基づいた遺言執行者のみです。

 

推定相続人の廃除をされた者が排除の取消しを請求することはできません。

遺言執行者の指定または委託

遺言によって子の認知や推定相続人の廃除など、相続人の利益に反するという具合に遺言内容によっては、相続人自身が遺言を執行すれば公正な執行が望めないときに第三者に執行させたほうがよい場合があります。

 

このような場合に、遺言執行の目的のため特に選任された者を、遺言執行者といいます。

 

遺言により1人または数人の遺言執行者を指定し、またはその指定を第三者に委託することができます。

遺産分割の禁止

遺言により、相続開始時から5年を超えない期間内に限り遺産分割を禁止することができます。

おわりに

今回は、遺言でできることについて説明いたしました。

 

神戸の終活奮闘記では、みなさまが遺言を作成するときや突然相続が始まったときに役立つような記事を書いていきたいと考えています。

 

この記事の内容についての質問等は、コメント欄またはサイト内のお問い合わせにて承ります。

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